運転席の窓に成人したてくらいな蜘蛛が張り付いていた。
秋ごろに家に出るアシダカグモを思い出す。かつて目の前にひょっこり現れたアシダカを凝視していたら、蛇に睨まれたカエルのように動かないアシダカは突然ケツから真っ白い液体を歯磨き粉みたいに放り出してカラッカラになって死んでしまった。眼力で殺してしまったと悦に入った俺は、以後、虫に眼力を試みるようになったが、まだ二度目はない。あれはなんだったんだろう。
こないだ仕事で行った場所で、後ろから老人が突然、君は人相が悪いねー、とシリアスな声で言われて、ハッとして振り返ったらガハハと笑われた。なかなかのブッコミに感心して、よく言われます、と笑い返した。