どこぞの事務所の廃品をトラックに積み込む。

何かをするために何かを測定する何かの機械を入れていたであろう小さな木箱が気に入ったので、もらうことにした。

 

そんなもん持って帰ってどうすんや。

 

定年後に再雇用されてバリバリ働いている積み込みのおっちゃんが呆れた笑みを浮かべて聞いてきた。

 

この全面傷だらけの箱が何十年も使われてきたことは見ればわかるやん。多分俺より年上やね。落としたりぶつけたり擦ったり、数え切れんくらいなっても、それでも箱の機能はまったく損なわれとらんし。大事なもん入れて、いろんなとこ行って、必要とされて、必要とされる仕事をたくさんこなしてきたしょーこや。俺はこの木箱におっちゃんのその浅黒ぅてきったない手ぇと同じ種類の美しさを感じたんや。

 

とは言えなかったよね。さすがに。

いやーなんか良くないすか?なんてヘラヘラして。

本音って別に言わなくても生きていけるけど、意識してでも言う回数は増やしていきたい。

 

これを言うのが恥ずいと思う気持ちがどうやって育まれたんだろう。こういうの言ったら引かれるだろうと今でも思う。でも秘すべきこととは思わない。でも言わない。

ちなみに箱の使い道は考えていない。

 

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