75はないです

不用品を処分しようと家中を引っかき回していたところ、ふとした拍子に体重計を見つけてしまい、つい魔がさして乗ってしまった。75キロという数字を見たときの驚きは、ここ数十年で一番のものだった。ひどい顔をしていただろう。何かの間違いだと思い、三回乗り直してしまったが、きっちり75で針は止まった。28インチのジーパンを履いて革ジャンを羽織って町を練り歩き、27になったらショットガンで頭を撃ち抜いて死ぬんだと思っていた成人の頃は、一生55キロから太らないものだと思っていた。数年後に〇〇を覚えてから、弁当は必ず二個買うようになり、毎日たけのこの里を飲み物のように消費していた頃の体重は65キロだったが、まあガリガリよりはマシかなと思うくらいだった。それからさらに数年が過ぎて、確かに腹が出てきたなとは思っていた。太ももの厚みのついての自覚もある。わかっていながら何もしてこなかったことも認めよう。でも75はねーわ。いくらなんでもそれだけは絶対に認めない。四捨五入したら80。もうただのデブじゃねーか。なにより恐ろしいのは、まったく自覚がなかったことだ。太ったな、という自覚はあったが、その数字についてはまったく無自覚だった。自己認識よりも10キロも重いことがわかってしまったときの絶望の比類なさ。こんなにナチュラルに75の世界に突入してしまっていたなんて今でも信じられない。信じたくない。だってそんなに太ってないもん。って思っちゃう。よくテレビに出ているデブが自覚なさそうにガツガツ飯喰ってる様子を見かけるが、あの気持ちがよくわかる。現在進行形で太りつつあるという現実を認識できないんだ。本人はガチでまだ大丈夫だと思っている。去年と比べたらそんなに変わってないもんって、そう思っちゃうんだ。そうしているうちに取り返しのつかない体になってしまうんだ。どげんかせんといかん。