藤井聡太の負け姿

7月9日、藤井聡太、これに勝てば史上最年少タイトルという勝負に今、負けようとしている。

まだ終わってはいないがAIで99対1である。解説者も、もう終わったものとして、藤井聡太はどう負けるのか、という眼で盤面を見ている。

といってもまだ2勝1敗でリーチに変わりはない。あと3局で1回勝てればタイトルなので、おそらく史上最年少タイトル記録は更新されることになるだろう。そんな伝説になることが約束された俊英の対局が生でバンバン配信されていつでもどこでも観ることができるようになったのはとても良いことだ。

それはそれとして、藤井聡太の凄さ、ヤバさといったものはあらゆる媒体で紹介されているが、彼の弱さ、課題みたいなものは誰も言及していない。まあ取材陣への穏やかで知性に満ちた対応や既に勝ちこせるプロがいないということもあって、今の浅薄な世論なら「おまえが言うな」って炎上するだろうからさもありなんなのだろうが、例えば大山康晴二上達也升田幸三丸田祐三なんかが解説していたらどうだったんだろうと、今のようにベタ褒めってことにはならんのだろうなと(原田泰夫は別にして、これはこれでとても良いのだが)と思う。

俺が思うのは、藤井聡太は負けた時の姿がとても弱々しいということだ。これまでに彼が負けた対局をいくつか見たが、終盤前に負けがほぼ決まったという局面では必ず負けたという顔になっている。あからさまにうなだれてみたり弱々しい顔でよそ見をしてみたりといったことになる。相手に負けたことが人目にわかる有様になっているのだ。正直、ああやっぱりまだ高校生なんだなあと安心したような気になったりもするが、やはり物足りなさがある。

羽生善治が中学生の時、NHK杯で歴代の名人をバッタバッタとなぎ倒して優勝してしまった時の姿を思い出す。若き羽生少年のギラギラした鋭い目つきは今でも鮮明に覚えている。

時代が違うと言ったらそれまでなのかもしれないけど、やはり勝負の世界だから、負けた時の姿はとても大事なことだと思う。前を向いて、諦めず、強い顔で最後まで負け将棋を指し切った時、藤井聡太は確実にもうひとまわり強くなる。メンタル、心、と言われている部分にはまだまだ強くなる余地がある。それは一将棋ファンにとって喜ばしいことだ。

羽生善治が若かった頃は今みたいに素人も玄人もベタベタに褒めてるだけではなかった(テレビで少年呼ばわりされたり呼び捨てにされたりしていたし、番外戦術も喰らっていた)から、あのギラギラさがあったのかもしれない。藤井聡太は今の環境でどうやってあのハングリーさを養うのだろうか。