どう説得すればおっさんずラブを見てもらえるのだろう

おっさんずラブが存外面白かったもんだから柄にもなく友人に猛烈に勧めてはや数日。電話があったので感想を聞いてみるとまだ見てないとかぬかしやがる。なんか友人の嫁が「題名が怖い」などと言い出したらしく、友人も同様の印象を持っていたのでしめやかに見送ったとのことだった。ハードルが高いんだと。なんだそれ、と思ったが、自分も見る前はそういう気持ちがなかったわけではなかったので何も言えなかった。とはいえ、私は、飲み屋で知り合ったり、軽く告られたり、女友達の弟がゲイで悩んでたり、少なからず同性愛の人と関わりがあったから、比較的理解はあるほうだと自覚しているけど、そういう当事者的な関わりがまったくない人からしたらそういう感じになっちゃうのも、正直わからんではない。しかしこんな面白いドラマなのに同性愛がテーマってだけで毛嫌いする人や食指が伸びない人がいることをこういう形で知ってしまうと、なんだかやるせない。

すぐにイチャイチャラブラブしたがる、めんどくさいデレを吉田鋼太郎、家事も仕事もそつなくこなす、ドライだけど健気なツンデレ林遣都、そんな2人のヒロインに惚れられて翻弄されるノンケのお人好しを田中圭が演じるこのドラマは、第四話で吉田鋼太郎に恋愛感情がないことを告白したり、林遣都に元カレが同僚の上司であることが発覚したり、さらに田中の家を出て元カレに家に行くとか言い出したり、田中と幼馴染の内田理央(隠れヒロイン)がなんかちょっとイイ感じになったり、いろいろと新たな局面を迎えて to be continued したわけだが、中でも、元カレの林遣都への「あっち側の人間に片思いをしたって絶対幸せになんかなれないんだぞ(だからヨリを戻そう)」的なセリフがけっこう深く刺さった。“あっち側”っていう線引きが単純に同性愛者とそうでない人のことを指しているとは思えなかったからだ。

現実でもネットでも、自分勝手な前提から自分勝手な仮定を立てて自分勝手な偏見を育てている人や、自分の間違いを絶対に認められない人や、自分と違う意見は一切認めず、知りもしない人格まで平気で否定できる人みたいな “お話にならない人” は自分の想像をはるかに超えるくらいにはたくさんいるわけで。特にネットでは、そういう人たちとは、何をどう話しても分かり合えるわけがない、という悲しい現実が毎日毎日繰り広げられているわけで。場合によっては自分もそういう人間であることを痛感させられたりもするわけで。それなりに生きてきた人なら誰でも ”あっち側“ という言葉にそれくらいの深く暗い断絶があることをなんとなく感じとってしまうわけですよ。だからこのドラマを「おっさんの同性愛ものだから」と食わず嫌いしている人に対して何を言えばいいのかがわからないんですね。どうすればフラットな目で見てもらえるのかがわからない。そもそも見てもらうための説得の仕方がわからない。

田中圭演じるはるたんは、そんな “あっち側” の壁をどうやってぶち壊してくれるのかってところも見どころの一つ、というかたぶん今作で視聴者に一番伝えたいことなんじゃないのかと思う。普通に楽しいラブコメのくせにこんな葛藤までさせるなんてほんと罪なドラマですわ。