無人島に行くならこれだけは絶対に持っていきたい

もし無人島にひとつだけ物を持っていけるとしたら?と聞かれると返答に困ってしまうが、無人島にこれだけは持っていきたい物は?と聞かれた時の答えはもう決まっている。

毛抜きだ。

例えば私の顔のエラの部分にはホクロがあって、そこから濃いめの毛が生えてきやがる。これを放置しておくとあの変なおじさん状態になってしまうので、定期的にその毛を抜かなくてはならない。これがどうしても嫌で、ホクロを自分で削り取ったのだが、それでもあいつは何食わぬ顔で生えてくる。その時、あ、これが運命なんだなあ、と判った。もし無人島に漂流などしてしまって何ヶ月も生活するようなことになったら、変なおじさんどころの話ではない。眉毛だって繋がっているだろう。とても恥ずかしくて、近くに船が通っても助けを求められないかもしれない。向こうだって毛むくじゃらが飛び出してくるのとムダ毛がきれいに整えられた紳士とでは対応も変わってくるだろう。毛抜きの有無で生き死にが決まってしまうかもしれないのだ。

例えば、一週間程度のちょっとした旅行を経験した人はご存知だろうが、鼻毛は伸びる。鼻毛が伸びているとすごく恥ずかしい。鼻毛を気にしながら旅行は楽しめない。自撮りだってできない。よって、抜かなくてはならない。よく旅行好きな人が楽しそうな旅行記をブログに書いたりしているが、ああいう人たちだって旅先でしっかり鼻毛を抜いているのだ。小洒落た女子なら鼻毛カッターなどを持参しているかもしれない。しかし電源が必要なものはいざという時にまったく役に立たない。旅行者のリュックを漁ったら、おそらく100パーセントの確率で毛抜きが発見できるだろう。逆に言えば、旅先で相方にムカついたら、喧嘩をするよりも毛抜きを隠すといい。相手はすっかり意気消沈し挙動不振になってしまうだろう。毛抜きは旅先で買えばいいというような消耗品ではない。ホールド力が弱いものや面がきっちり研磨されていないものは意外に多く、それは買ってみるまでわからない。毛抜きだけは使い慣れたものでないとダメなのだ。誰もがオンリーワンの毛抜きを持っているのだ。

終戦を知らないまま、30年間フィリピンのジャングルでサバイバル生活を送っていた小野田さんという方がいるが、彼が帰還した時の写真はきれいにヒゲが整えられている。同じく横井庄一さんという方も終戦後長いサバイバル生活を送った帰還兵だ。ボロボロの布キレを着て痩せこけてはいたが、やはり眉毛は繋がっていなかった。ムダ毛処理は、人間が人間らしくあるための最後の一線なのではないだろうか。