いつもの帰り道、Y字の空間の真ん中からスタートする。どちらかの斜めの線を選んで国道である下部の一本線に合流したら、あとはそのまま走るだけだ。基本的には左から左折で入るようにしている。左折で道に入るほうが入りやすいからだ。しかしそちらの道は国道ではないので、合流のところの信号でけっこう待たされる。右側の斜めの道は国道なので、そちらからスムーズに入れればそちらの方が早いしストレスも少ない。しかしまず国道に右折で入るところめんどくさい。合流地点の電柱に歩行者用の信号ボタンがあるから、車を降りてそれを押せば信号はすぐに変わる。しかしその車を降りてボタンを押しに行くのがめんどくさいのだ。そんなわけで、まず車を走らせる前に、右側の道に歩行者用の信号待ちの自転車や歩行者がいるかどうかを確認する。その国道を渡る歩行者はなかなかレアなのでほとんどの場合は確認だけして左の道に向かってハンドルを切るのだが、もしもいる場合は右側の道を選ぶ。その場合、歩行者がすでにボタンを押しているか、もうすぐ押されるはずだからである。

今日は右手の国道の向こう岸に信号待ちの小太りの婦人を見つけたので、右手にハンドルを切った。しかし待てども待てども信号が変わらない。婦人はボタンを押していなかった。その道を歩くのは地元住民以外にありえないし、今日初めて渡ります、という風情でもない。しかしボタンの存在を知らないかのようにボーッと突っ立っている。そのもたれかかっている電柱の腰のあたりにボタンがあるにもかかわらずである。私は車の中で「ボーターンー」と叫びながら大げさに指で押す仕草をなんども繰り返してなんとか気づいてもらおうとするが気づいてもらえない。やっとこちらを見た婦人は、私の必死の形相に顔をしかめた。因縁をつけていると思われたのかもしれない。ようやく気がついたのか、人差し指を電柱に向かって伸ばしたと思ったら、電柱に巻かれている黒と黄色のボーダーの腹巻みたいなやつの表面のデコボコをつんつんし始めた。そんなわけで、私が車を降りてボタンを押すはめなってしまった。信号が変わっても私と婦人は目をそらすことなく、ガンをつけあったまますれ違う。二、三分無駄にしてしまった。数字にすると大したことないように思えるが、ここ最近で一番腹が立った。