バッタとキリギリス

ある日の夜、ちょっとした拍子に猫が家の外に出てしまった。翌日の朝、隣の廃屋の藪の中からこちらを窺っているのを発見し、無事保護した。猫にとって外は危険だし、家にノミを持ち込まれても困る。そもそも色々考慮した上で家から出さないことを大前提として家に迎え入れたわけで、そこは割り切らないといけないところなのだが、その日以来、時折外を眺めながら恋しそうな声を上げるようになった猫を見ていると複雑な気持ちになる。ふと鈴虫のような鳴き声がした。どこからともなく、しかしそれが家の中のどこかであることは間違いなかった。カーテンの裏に、面長の仮面ライダーみたいな、目が異様なほど発達していないバッタを見つけた。バッタの鳴き声って聞いたことがなかったなあと思いながら、バッタに触れない自分がいた。子供の頃は手で持っては裏を見ていたのに、どういうわけだか今では触るのが生理的に無理だ。ちょっとした顔見知りになってしまったがためにかえって気軽に入れなくなったバーの店主を思い出す。調べてみると、今までずっとバッタだと思っていた虫はキリギリスだった。まあ同じなんだけど、キリギリスはバッタ目の中に属しているので、人のことを哺乳類といっているような感じがしてちょっと申し訳ない。