鉄塔をつなぐ送電線の不思議

私が住んでいる地域はランドルト環のような盆地地帯の田舎なので外に出るとどこを見てもこんもりとした山が見える。山には送電線を繋ぐ鉄塔が森を貫くように点々とそびえ立っている。私はこの送電線をどうやって張り巡らせたのかがずっと気になっている。

 

以前、戸建てや集合住宅向けの電気設備系の現場仕事をしていたとき、バディであり師匠である親方に聞いたが知らないと言われた。ネットで検索しても見つけることはできなかった。もちろんまさに送電線が張られている現場も見たことがない。なんとなく想像はつく。鉄塔間の地べたに線を這わせてピンと張るやり方だ。それ以外の方法は思いつかない。しかし、やはりちゃんとした答えが知りたい。

 

電線は現代のまさに命綱なので、毎日メンテナンスに余念がないことだろう。昔、電力会社のテレビCMで送電線の保守作業が流れていたことがあった。それは送電線にしがみついて綱渡りのように進みながら点検するというやり方だったが、クレイジージャーニーで取り上げてもいいくらいクレイジーな仕事だと思う。ジャーニーではないが、初期と比べてジャーニーが出ない回もあるので問題はないだろう。

 

私が今までで一番怖かった仕事は千葉での電柱作業だ。一般的にその辺に建っている電柱は10mくらいなのだが、それは20m柱と言われているものだった。その仕事を始めて初めての現場だったこともあるし、免許を取った次の日に東京から千葉まで行かされたこともあり、とにかく怖いことしかなかった。台風が直撃する中で電柱作業をしたこともあった。その時はバディが電柱の上で200vに感電した。

 

20mは怖いぞと言われていたが、正直おしっこがちょっと漏れた。今でも実は30mはあったんじゃないかと思っている。あれより高い電柱を見たことがない。電柱は上に行くほど細くなっていて、2人で昇っていると風が吹いただけでもけっこう揺れる。八分ほど昇ったところから下を見ると下を走る車がほんとに米粒くらい小さく見えた。よく高いところが怖いなら下を見るなという意見があるが、それは無理です。落ちて即死することや死ななかった場合のことが頭から離れなくなって電柱にしがみついたまま動けなくなって上にいるバディをイラつかせた。全身に力が入りっぱなしの状態のまま電柱の先にしがみついていたが、数十分もすると筋肉が震え出していよいよ降りないと落ちちゃうくらいヤバくなった。あのときほど死を意識したことはない。人間死ぬ気になれば恐怖を乗り越えられるものだ。

 

で、鉄塔の話だが、あれも高い。30mよりも高いだろう。私がなにより言いたいのは、電柱にしても鉄塔にしても登って作業することが前提で建てられているにもかかわらずハシゴが直角に伸びていることだ。あれを登るのはほんとに疲れる。SASUKEじゃないんだから、もっと登りやすい作りはなかったのだろうか。下手したらツタみたいな雑草が絡みついている場合があって、そうすると草刈りをしながら昇ることになる。蜂の巣があったりなんかしたら仕事にならない。場所によっては電柱でもそういうことが少なくない。そうして苦労して高いところに登ってさらに電線にしがみついて作業をしないといけないんだからクレイジーじゃないとやってられんだろうあれは。

 

今ではゴンドラみたいのに乗って作業しているところもあるみたいで、いずれはドローンなんかが高所作業を担うようになるのかもしれない。現在でもすでに目の代わりにはなっているが、手の代わりになるのはまだまだ先の話だろう。鉄塔自体が必要なくなるような送電の仕組みが発明されるのが一番望ましい。無線送電の技術は順調に発展していて、スマホの充電に使われたり巡回バスなんかにも試験的に用いられているようだ。そういえば師匠と神奈川を回っていたときに聞いた話、神奈川や東京など人口の多い都会では住宅街に送電線が通っていて、鉄塔や仰々しい電気施設の間近に家が建っているのもよく見られる風景だが、そういうところは土地が安いらしい。