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突然ですが


毎日走っている道の見慣れた景色でもすべてを記憶している、というわけにはいかない。


今日、片側一車線しかない朝の国道がある地点からやたらと混みだした。田舎とはいえたまには渋滞もする。一車線だから、ちょっと遅い車がいたらそれだけで流れがだいぶ滞る。東京で暮らしてた頃の朝の渋滞ほどではないが、やはりイライラすることには変わりない。それにしても今日の渋滞はやけに長い。GWが終わったばかりだというのに、また事故でもあったのだろうか。


イラつく気持ちを紛らわそうとあたりを見回す。いつもの見慣れた風景のはずだったが、ひとつ見慣れないものを発見した。それは国道沿いの店舗のものだろう電光掲示板だった。縦1.5メートル横50センチほどだろうか。そこに表示されている文字が私の気を引いたのだ。


突然ですが


いったいなんだろう。その店が理容店であることはなんとなくわかっていたが、電光掲示板があることは見逃していた。先が気になる。と思うやいなや、文字が上に移動を始め、下から文字が昇ってきた。


ここで一句


理髪店の店主は電光掲示板を利用して藪から棒に自らしたためた句を披露しようとしていた。私は固唾を飲んで句が詠まれるのを待つ。しかし渋滞の列はゆっくりと進み始めていた。


受験生


受験生?今さら?(調べたら「受験」は春の季語でした)


カツ丼〜〜


あーもう通り過ぎちゃったよ!


カツ丼食うの?あと3文字しかないんだからもう食うしかないよね。下の句は?食ってどうするの?受験にカツんでしょ?


たまたま渋滞で止まってたから「突然ですが」から先を待つことができたけど、普段この道4、50キロで車走ってるから誰も見れねーよ!歩いてる人だってほとんどいねーよ!ていうか国道沿いの電光掲示板なんだから車で通る人のための広告なわけじゃん。なに一句詠んでんだよ!あーーイライラする!


このあと2回この道を通った。期待してはいなかったけど万が一があるので、少しだけスピードを落として電光掲示板に注目しながら走った。2回ともまったく関係ない文字が流れていた。1回目は「お茶〜〜カタカナ」だった。お茶トリートメントかなにかだろうが、こっちは走ってるし向こう文字は下から上に昇ってるしでぜんぜん読み取れなかった。2回目に至っては何も思い出せない。確かなのは、電光掲示板内に収まる文字数でなかったことと、理容店とはなんの関係もない内容だったということだ。


電光掲示板からこの店についてわかったことは、店主がお茶目だということだけだ。だからといって利用しようという気にはならなかったが。たぶん使い方が間違っていることは承知の上だろう。誰かにそそのかされて電光掲示板を設置したはいいけど、販促ツールとして芳しい成果を上げずに何年も経過したのだろう。手間と金をかけて撤去するのもバカバカしいと思ったのだろう。誰も見ていないことをわかった上での「突然ですが」なのだろう。


私だけは、毎日この電光掲示板を見てあげよう。そう強く思った。それが見つけてしまった者の負うべき責任なのだから。

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