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「ありがとう浜村淳です」の昭和感を抱きしめて

昭和が終わってもう20年近くが経とうとしております。
街並みや技術は少しづつ入れ替わり、昭和を感じさせるオブジェクトは絶滅しつつあります。まあそのこと自体は喜ばしいことなのかもしれません。しかし昭和生まれの人間としては、たまには昭和の手触りを感じたくもなるわけで。

そんな私の最近のひそかなお気に入りが「ありがとう浜村淳です」というラジオ番組です。

これは1974年に始まって今も日曜以外の毎朝8時からやっている毎日放送のラジオ番組です。このオープニングの昭和感がとにかくたまらなく昭和感に溢れています。正直に申し上げると物心つかない頃の朝の食卓で流れていたのをそれとなしに聴いていただけで、それ以来まったく聴いていなかったですし、母はどちらかと言うと同時間帯のライバル道上洋三派でしたので「おはようございます道上洋三です」のほうが馴染みがあるのですが、最近改めて聴いてみると、やはり私に遺伝子には道上洋三と同様に浜村淳のリズムもキッチリDNAに刻まれているのだと再確認した次第です。

まず言いたいのは、番組名に「ありがとう」という言葉を持ってくるセンスです。ほとばしる昭和感もさることながら、番組の思いのすべてを一つの言葉で表す力強さがとても素晴らしいと思います。

そんなこの番組の一番の昭和ポイントはオープニングです。昭和感がハンパじゃないく昭和でもう昭和にトリップしたんじゃないかってくらい昭和なんですね。まあ昭和に作られたものだから当たり前なんですけど、

いちばんに
いれる番組
なんでしょう
くる日もくる日も毎日放送

というアシスタント女性の前口上から始まるオープニング。この声質、五音七音の語感、言葉選び、しかもこれは毎日放送の周波数1179のあいうえお作文の作りとなっています。ここを聴いた瞬間に目に映るすべてがナブラチロワに塗り替わるくらいの昭和感があるのですが、その後に

ありがとう浜村淳です

と、ありがとうギャル(今はありがとう娘)たちがタイトルコールをするのですが、しっかりした発音やハツラツ感、礼儀正しそう感にとても昭和を感じます。

で、タイトルコールが終わってすぐテーマ曲が流れるのですが、これもまた素晴らしい。
「ありがとう」と「らららんらんららんらん」のループのみで構成されるメロディと編曲の凄まじい昭和感は昭和を生きた人であれば誰もが首肯してくださることでしょう。

このほっこり感は、昭和を懐かしんだり、あの頃は良かったなあと思い出に浸ったり、そういう単純な郷愁ではありません。このせわしなく移り変わり続ける現代においてもはや場違いとも言えるその空気感にシュールな可笑しみを感じたり、変わらずにそこにあり続ける石ころのような寂しさを感じたり、たった1分弱のオープニングでそういった様々な思いが後ろ髪を引かれることなく脳裏をふわっと流れていきます。言葉とメロディだけでタイムスリップしているような不思議な心地良さです。

もちろん、番組で取り上げるトピックは時事的なものですが、オープニングの空気感を変えずにずっと続けているところから、制作陣の熱い想いを汲み取りたくなります。

そんな「ありがとう浜村淳です」は公式ページからネットで拝聴できるようになっているのですが、前口上とテーマソングは丸々カットされていて、いきなり浜村淳のオープニングトークから始まります。トークの後ろに流れるテーマのBGMすらありません。私はこれがどうしても納得いきません。まあここまでオープニングが気に入っている人もいないでしょうし、朝だからこその前口上ですし、仕方がないのかもしれません。これもネットで聴く世代や状況への忖度なのでしょうか。