読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

あとしまつ

BSトゥエルビで「キューポラのある街」という映画をやっていた。

これは1962年の映画で、埼玉県川口市を舞台にした戦後の高度経済成長期の頃の話だ。キューポラをざっくり説明すると鉄を溶かすための装置で、街でも頭一つ抜け出ているほど巨大な経済成長のシンボルだ。

驚いたのは主演の吉永小百合は中学生役で高校の学費を貯めるためにパチンコ屋で働いていたことだ。しかも台の列と列の間に一人分の細い通路があって、そこに店員が常駐する形で球の補充や不具合の対処をリアルタイムで行なっていたのである。内側はとても忙しく、台の調整が追いつかないことに腹を立てた客が悪態つきながら台を叩くと、上から吉永小百合がにょきっと顔を出して「今やってるわよ!」と言い返すシーンがとても印象的だった。ていうかこれ児童労働やんっと思ったが、吉永小百合の人権が蹂躙されたりなんらかのハラスメントを受ける描写はなく、同年代の女子とダベりながらハツラツと働いていた。今の方がよっぽど息苦しい。

書いていて思い出したが、以前東京で小さな会社で設備関係の仕事をしていた頃、東京中のビルの屋上で保守作業をやっている二人班がいた。一人は入りたての中年だった。ある日の屋上での作業中、新入りが書類の入ったバインダーを置いていたら強風に煽られ、指示書やら報告書やら一切合切が空に舞ったことがあった。たしか銀座らへんだった。

それを報告すると、作業は強制終了させられ、落とした書類を一枚残らず拾うまで帰ってはならないと命じられた。それらの書類に価値を見いだせる人は東京中探してもいないだろうが、一応重要書類なのである。そんなもん無理に決まってるんだけど、もちろんそんなことは言えるわけもなく、他の現場に出ている会社の人間を全員集めて夜中になるまで探し回った。無理だと分かっていても、そこまでやる姿勢を見せなければならなかった。先方が「もういいよ」というまで止めることはできない。もちろん全て拾い切ることはできなかった。

どっちが悪いとかじゃないけど、っていうかどう考えてもこっちが悪いから当然の成り行きなんだけど、今考えても何かが引っかかってどうにも釈然としない。

ちなみに私だけは他県で一人で別の仕事をしていたので召集の電話は丁寧に断った。その二人班の親方には散々嫌な目に遭わせられたからザマアミロと思った。金も出ないのに夜中まで銀座の道端を這いつくばりビルの隙間に入り込み、大嫌いな人のためにどうでもいい書類を探し回るなんて絶対にやりたくなかった。巻き添えになった人が本当に可哀相だと思った。

そういえばいつだったか、重機を乗せた船かなんかで、重機のアームを下げてなかったからとかなんとかで送電線を盛大にぶった切って東京の広域を停電させてしまった事件があったけど、加害者は莫大な賠償金のケリはついたのかな。

広告を非表示にする