以前、夜逃げしたのではないかと疑った、車庫を挟んだ隣の家に住む婆ちゃんは、毎日庭に車椅子を止めて、道路際にしゃがみこんでいる。毎日国道を走っていると、歩道の際にしゃがみ込む爺さんを一週間に一人は見かける。今日は三人見た。全員が全員、同じ行動をしている。行き交う車を見ているのではない。地面を触っているのだ。土を指で弄ったり、縁石の淵の小石を弄っている。介護福祉士と思しきねえちゃんや軽の運転席に座る妻と思しきばあちゃんに見守られながら。認知症なのだろう。

子供の頃を思い出す。毎日砂場でさらさらの砂をただ触ったり、小石を拾って形や色を見詰めたり、そんなことばかりしていた時期があった。その時何を考えていたのかと思ったがどうしても思い出せなかった。たぶん砂や石のこと以外、何も考えていなかったんだと思う。唯一思い出せたのは、小学校の頃のことだった。帰り道に中学校があって、その脇には用水路が通っていて、浅く水が通っているのだが、毎日そこで土のお団子を作っていた。ハシゴで用水路に降りて水を付けてその周りにさらさらの砂を纏わせて、その繰り返しで硬くてまんまるのお団子を作っていた。途中で小便をしたくなったらそのまま用水路に放尿していたのだが、たまに勃起しているときがあって、皮を剥いて小便をすると飛距離がかなり伸びた。それを友達に自慢していた。小学校中学年くらいだったと思うが、性的なことは何も知らなかった。中学校はちょうど掃除の時間で、クラッシックの音楽が流れていたのをよく覚えている。今の小学生はそんなことしていないのだろうなあ。

年をとると子供に戻る、と誰かが言っていたような気がするが、道に座って土を触るじいちゃんばあちゃんは何も考えてなくて、ただ土を触りたいからそうしているのだろう。私もたぶんそうするだろう。しかしイマドキの土を触ったりしないで育った子供は、そうしないのだろうなあ。今日ばあちゃんと近所のじいさんを病院に連れて行った時、その周辺は医療機関調剤薬局が集中していた。今の子供が老人になった時、日本はどうなっているのだろう。介護都市や医療都市のようなものが造られているのかではないか。そうでなければ、日本という国はなくなっているだろう。