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はてなブロガー伊藤計劃の小説「虐殺器官」の正しい読み方

 

その言い訳がましさと知識のひけらかしに序盤早々嫌気がmaxに達した「虐殺器官」ですが、ようやく読み終わりました。当方、貧乏性なもので、読み始めてしまったものは最後まで読まないと勿体無いというただそれだけの理由で意地になって読みました。

 

序盤早々の怒りはこちら

伊藤計劃「虐殺器官」がヤバすぎて泣きそう - friedhead's

 

控えめに言って6割ほどの文字列は読む必要の全くない完全な蛇足でしたのでほとんど流し読みなのですが、つまんない話を、これから面白くならないことがわかっている話を長々聞かされるのはほんとうに辛いものです。頑張った自分を褒めてあげたい。

 

とりあえず倒置法がとても多くてうんざりしました。。1ページに数回出てくるレベル。そして下の句は全て必要ない余計な飾りでした。

 

説明のための会話、説明のための独白、説明のための説明、きょうび出来の悪いテレビドラマだってここまで説明がましくはないぞ、って終始思っていましたが、エピローグでその400ページにもなる冗長で鼻につく説明がまさに説明であったことが明かされました。説明の説明による説明のための小説。人生で読んだ小説の中でもワースト3には入る名作です。まさにSuckでFuckなSF小説で御座いました。

 

虐殺器官」は、第七回小松左京賞SF小説の新人賞)の応募作品でした。予選委員の満場一致の満点評価で最有力候補となりましたが、最終的な権限を持つ小松左京氏の鶴の一声で「虐殺器官」の受賞は見送られ、「受賞者なし」で落着しました。小松左京氏曰く※一部抜粋

 

伊藤計劃の「虐殺器官」は文章力や「虐殺の言語」のアイデアは良かった。ただ肝心の「虐殺の言語」とはなんなのかについてもっと触れて欲しかったし、虐殺行為を引き起こしている男の動機や主人公のラストの行動などにおいて説得力、テーマ性に欠けていた。

 

とのことです。書き口はだいぶマイルドですが、これまで全10回催された小松左京賞において「受賞者なし」で終わったのがこの第七回だけだったという事実は、他のどんな論評よりも説得力がありますね。新人賞なんだから至らない点があるのは当然ですし、予選委員はあまねく大絶賛したわけですよ。おニャン子クラブでも「あげちゃう」レベル。それでも「あげない」んですから、そこには相当の理由があるわけです。

 

それにしても予選委員たちと小松左京氏の見解の溝がどうしても解せないですね。いったい予選委員は何を見ていたのかと首を傾げずにはいられません。あと、この小説は十日で書かれたらしいですが、そんなものは自慢でも評価点でもなんでもないです。早くて評価されるのは早飯と早グソだけです。ああ早グソだからか。描いてて納得してしまった(笑)

 

前にも書きましたが、文体や文章の流れがとてもはてなブログ臭かったです。PCの前に座りっぱなしのブロガーが、ネットだけで知ったその狭い世界を書き綴ったような文章。書かれる文章のほとんどは過去の、何処かの誰かの言葉、知識の寄せ集めでした、これもまたはてなブログっぽい。インプットをそのままの形で並べ替えているだけでした。このような人工知能にでも書ける記号の羅列に私は何の価値も感じません。知識は個々の経験というフィルターを通してナンボだと思います。そこを通って初めて、テーマ性や説得力が生まれてくるのだと思います。このあたりもとてもはてなブロガー的ですね。

 

また、物語のからくりであり、掘り下げ不足とされた「虐殺の言語(文法)」ですが、これは現在わたしたちがネットでよく目にする文字列を揶揄しているのでしょう。

 

炎上の文法、拝金の文法、嫉妬の文法、憤怒の文法、嘲笑の文法、承認の文法、ネットには負の感情を煽る文章が目につく場所にどっさり置かれています。これらの文法を駆使した文章を書くことでいくばくかの金や承認を手に入れようとする人がどんどん増えています。このような現状をひっくるめて「虐殺の文法」として扱い、皮肉ってるのだと感じました。こういった文章は書く側も読む側も無意識に心がささくれだってしまうんですよね。「人の悪口を言うな」って昔からよく言いますけど、そういう意味なんですよね。

 

だからネットに親しんでいる比較的若い人たちは、「虐殺の文法」について説明しなくてもなんとなく理解できているんじゃないかな、と思いました。といっても、このような愚痴や悪口は昔からあるものですから、そういうものがどんどん広がって社会が疑心暗鬼になってついには互いに殺しあう、、、っていう筋書きはいくらなんでも稚拙過ぎます。戦場が舞台になっていることが、より稚拙さに拍車をかけています。学園ものや仮想都市もの、ファンタジー要素を強めにしたシリアス美少女ものにした方がよほどマシだったのではないかと思います。

 

虐殺器官という小説自体が「虐殺の文法」によるものである、というのがこの小説の渾身のからくりであり、趣向を凝らしたメタなネタなわけですから、私のようにとてつもなき破壊衝動を自覚しながら読むのが唯一の正しい読み方です。たとえそれがこの小説への破壊衝動であろうとも。←こんな感じの倒置法が戦場の最前線に転がる屍のごとく散らばっています。

 

レビューをアサルト、感動している人や絶賛する人がたくさんいましたが、それは「虐殺器官」という小説に書かれた文字列をただなぞっただけに他ならず、上っ面しか読めていないことになります。すなわち「虐殺の文法」そのものの否定になるわけです。つまり、この物語が評価されるこの世界こそ、ジョン・ポールが切望した虐殺のない世界、守るべきパラダイスなのであります。素晴らしい皮肉ですね。

星1つです。

 

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)