伊藤計劃「虐殺器官」がヤバすぎて泣きそう

伊藤計劃とは、「ハーモニー」が映像化されたことで知っている方も多いかと思います。また、夭折したSF作家としても知られておりますが、はてな界隈では、はてなブロガーとしてデビュー前からよく知られていたようだと係りの者から聞いております。

 

そんな伊藤計劃さんの「虐殺器官」を今読んでいます。

読み終わってないくせにこれから感想を書くわけですが、なによりも最初に言っておきたいのは、

 

伊藤計劃

 

ってなんて読むか分かりますか?ってこと。名前の読みがわからない作家なんてこの人が初めてです。このエントリを書くにあたって名前の読み方だけを調べるはめになりました。そんな作家ほかにいるか?って話。いやいいんですけどね、なんか引っかかるんですよ。細かいことが気になる、僕の悪い癖。

 

これはペンネームなんですけどね、わざわざ読みにくい漢字を当てることの意味ってなんなんですかね?はてな界隈のことを知らない人にはピンとこないかもしれませんけれども、読み方が知られていない漢字をあえてペンネームにする手前勝手なこだわりはてな民特有の選民意識のようなものを感じて正直イラっとしました。

 

いやまあ、こだわりってのはあまねく手前勝手なものなのですけどね。答えは「けいかく」なんですけれども、日本人の3割も読めないと思いませんか?「「伊藤計画」じゃだめだったんですか?」ってね、私の心の中の蓮舫が詰問したがってるわけですよ。

 

まあそれはさておき、60ページほど読み進めたわけなんですけれどもね、強く思ったわけです。

 

これ、メタルギアソリッドの主人公が青臭い日本人メンタルを持つ青年に変わっただけじゃねーか、と。

 

描写から世界観からナニからナニまでメタルギアソリッドを想起させまくりなわけですよ。

 

メタルギアソリッドなんてPS2版をちょっとしかやったことがない、そんな私ですらそう確信するくらい、まるっと同じなわけです。実況プレイ動画を見ているような気になるくらいです。影響受けすぎちゃってるわけです。

 

で著者のプロフィールを見てみると、案の定この作品の後に「メタルギア」のノベライズを書いてるわけです。他の紹介記事をいくつか読むと、著者はメタルギアシリーズが大大大好きなのだそうです。

 

いやいいんですよ。メタルギアソリッド面白いと思いますよ。でもね、こっちは著者の好みなんて知ったこっちゃないし、そういう二次創作みたいのは求めてないわけですよ。メタルギアソリッドがやりたきゃゲームをやったほうが良いに決まってるし、実況動画見たほうが面白いんですから。

 

もう、この時点で興味が急速にしおれてしまったわけですけどね、引っかかることが多すぎるんですよね。

 

例えば、この小説はこじらせ系日本人的な主人公の一人称による語りと三人称からの解説がごっちゃになってて、とりわけ一人称視点での語りが多い作品なんですけどね、ちなみに一人称は「ぼく」です。この手の一人称による語りが多すぎる小説ってね、まあアマチュア小説に多いわけですけれども、そういうのは99%クレイモアなんですよ。

 

なぜならそれを読んでる側は、散々いろんな事を主人公に語らせてるけどね、それ全部「お前の自分語り」だよねと思うからです。お前ってのはもちろん著者のことです。

 

主人公に濡れ衣を着せて自分の思っている事を言わせてるだけなんですよ。それくらいキャラが立ってないんです。こういうの多くなったなあ。ほんでもって、あまりにもベラベラベラベラ語りまくるもんだから、物語がちっとも進みゃしない。ブログかっつーの。

 

仮にも一流のアサシンですよ。心を殺す訓練が出来上がってるわけですよ。そんなやつがそこまで語っちゃいますか?と。吉田豪がインタビューしたってそんなに喋らんだろってくらい、どうでもいい語りがいちいち挿し込まれてくるわけですよ。のちの展開に関係あるんだろうな?なんて野暮な猜疑心がかま首をもたげるくらい冗長なんですね。

 

あと、一番イラっとしたのが、メタルギアソリッド的作戦行動中、ピックアップトラックの脇に書かれた日本語についての同僚との会話にて

 

文字はフジワラという名前のトウフ・ショップが使っていた車であることを物語っている。日本のトウフ・ショップも、まさか自分が売り払ったオンボロが、はるか東欧の内戦で機関銃の機動銃座に使われているなどとは思いもしないだろう。

 

これはヤングマガジンで連載されていた漫画「イニシャルD」の主人公藤原拓海の実家が営んでいる藤原豆腐店の車であることを示唆しています。えーと、こういうのを指す専門用語があったはずですが、要するにこれって笑いどころなわけです。

 

そういうやっすいギャグいらねんだよ!

 

そもそも藤原豆腐店は豆腐の配達をハチロクでやってたわけで、その後藤原豆腐店がピックアップトラックを購入したくだりなんてのは出てきてない(はず)んですよ。オヤジも拓海の自立に伴って違う車を購入したはずですがね、根っからの走り屋家系の藤原豆腐店が豆腐を配達するためだけのピックアップトラックを購入するわけがないんですよ。出すならせめてハチロクを出しやがれってなもんですよ。

 

なんで日本の中でも秘境中の秘境グンマーのちっぽけな豆腐屋のトラックが流れ流れて東欧の紛争地帯にいくんだよと。どういう笑いなの?と。よりによってそのネタをそういう風に使いますか?っていう。こういうちょっとした遊び心もメタルギア的なのですが、それにしたってあまりにもセンスが無さすぎる。ていうかシリアスなのかコメディなのか現実なのか虚構なのか、いったい読者をどうしたいんだよ、と。余計な描写が多すぎるんだよ、と。こういった独りよがりでお寒い感じも、はなはだ「はてな的」であるわけでございます。

 

まだ60ページしか読んでないのに、もう泣きそうです。読み終わった後が怖いんです。

 

私はそんなに本を読んでいるわけではありませんが、どんなにつまらない小説でも、たいていは何かしら見るべきものがあるもんです。それでも読み終わった瞬間、アイスラッガーのようにして投げ捨てた小説は山田悠介リアル鬼ごっこ」くらいなもんですし、同じく読み終わった瞬間に上島竜兵が憑依して思いっきり床に叩きつけたのは「喫茶タレーランのたりらりらん事件簿」くらいなもんです。

 

なにが恐ろしいってこの二作、めっちゃ売れたんですよね。信じられないくらい売れた。日本は哲学的ゾンビに侵略されちゃったんだって絶望するくらい売れた。つまり、日本においては宣伝に金をかければどんなモノでも売れるんだってことです。内容なんて二の次三の次、極論無くたっていいわけ。それこそウンコでもメディアでスクラム組んで宣伝すれば「あれ、意外とおいしーかもー」なんつって売れちゃうわけですよ。まあ伊藤計劃さんは志半ばで若くして死んでしまったわけですが、それをプロモーションに利用したにしてはあまり盛り上がらなかったなあ、というのが率直な感想です。

 

んで「虐殺器官」は、そんな「リアル鬼」や「たりらりらん」にさえあった、創作において無くてはならないモノが欠けています。

 

それはオリジナリティです。

 

今のところ「虐殺器官」には、ひとっかけらのオリジナリティもありません。

先述したように、世界観はメタルギアソリッドそのまま、途中で挟み込まれるのは既存の固有名詞の伝説などの切り貼り、ポスターをペタペタ貼り付けたようなペラッペラの質感の世界に、速水もこみちがオリーブオイルを注ぎ込むがごとく自己主張をまぶして出来上がったのが「虐殺器官」という小説です。オリジナリティ一という点においては、正直なろう小説やカクヨム小説のほうがよっぽどマシだと思えるくらい他人の褌で相撲とってます。まあそれが面白いと思う人もいるんでしょう。比べるのも失礼ですが、私も田中圭一は大好きですからね。しかし伊藤計劃においては、事前情報なしに読むもんじゃあありませんね。

 

まあ、まだ全部読んでないから、これから面白くなるのかもしれないんですけどね。

そうなって欲しい。