古今東西の恋愛ドラマの共通点から考える女の欲望

昨日だか一昨日だかの夜、何気なくテレビをつけたら「当然ですが明日結婚します」というドラマが始まった。これまでに一話も見たことがなく、まったくなんの興味も無いのに最後まで見てしまったのは、このドラマが面白かったからでも最終回だからでもない。恋人役とそのライバル役の男が見たことも聞いたこともないどころか俳優かタレントかモデルかエグザイルかどうかすらわからない華の無い馬の骨だったからでもない。当の昔の、家族で一家団欒しながら見ていたトレンディドラマを思い出したからだ。構成やシナリオが酷似していたのだ。恋愛ドラマの最終話なんてものは、そこから見てもだいたいの内容は分かってしまうものなのだ。

 

昔の恋愛ドラマとの共通点で特筆すべき点は三つある。

 

一、彼氏にも彼女にも対抗馬がいる。

ドラマの中盤は、死んだ元カレとか優しい嘘をついた元カノとか突然出会った金持ちとかを片方にのっけた天秤が上がったり下がったりする描写がほとんどだ。

 

二、仕事と私、どっちが大事なの?

これも定番。最終的に男は絶対に女を選ぶ。

 

三、たくさんのひとたちに祝福される

気の置けない数名の友達、職場の同僚、ライバル、登場人物の全員に祝福されて大団円を迎える。

 

たいていの、いや全ての恋愛ドラマはこうであるか、もしくはこれに酷似した亜種である。

トレンディドラマなんて言葉はもう死語で失笑ものなのだが、現在の最先端恋愛ドラマなんて言っても、やっていることは101回目のプロポーズと同じなのである。変わるのは俳優の顔と化粧と着ている服と、要するにアイコンと景色だけなのだ。「突然ですが」からは、そういう古臭さがあからさまに見て取れた。それはつまり、今も昔もそれよりずーっと昔から人間が、いや女が持っている欲望の具現化なのである。

どれかに決めかねるほど魅力的な複数の異性から言い寄られ、品定めをしながら、ちょっとしたニアミスや失態を犯しながらも、最終的には一番の異性を自らで選び取る。そしてその選択はたくさんの人に喜ばれ、祝われる。日本の恋愛ドラマとは古今東西そういうものなのだ。吐き気がするぜ。笑いやら涙やら色々の感情の見せ方の幅がどんどん広がっているのに対して、恋愛の見せ方はずーっと甘ったるくて嘘臭いまま止まってるんだよなあ。AVでさえ進化してるっていうのに。

 

そして、この手のドラマで一番大切なところ、一番の見せ所は「覚悟」と「決断」と「行動」にある。

すっかり広くなっちまった部屋に残された飲み残しのペニーロイヤルティーを見てハッとして

「俺はおまえじゃなきゃダメなんだ」「やっぱり私あの人じゃなきゃダメ」

なんて心の中で絶叫しながら雨の中を飛び出してお相手の元へ傘もささずに走り出すわけですよ。途中で転んだりトラックの前に飛び出したりなんかしたりしてね。そしてその思いを当人にガッツリぶつけるわけですね。

 

たくさんの理想的な選択肢から正解を自らで選び取る、そして自分も選ばれる、というところに夢がある。覚悟を決め、決断し、行動に起こすことに希望がある。もちろん、現実にこういった都合の良い話はなく、覚悟も持てず、決断もできず、行動も起こせない人が多いからこそ、ここが一番の見せ所なのである。といっても、これはあらゆる物語についても言えることで、なればこそ覚悟、決断、行動に至るまでの各キャラの思考や行動の展開には相当の論理的整合性が求められるのだが、恋愛ものは総じてここのツマミがバカになっているのである。恋愛は病気とはよく言ったものだ。そこが面白さでもあるから難しい。

 

何事も、いつかは選ばなきゃいけないんだよなあと思うし、だったら選びたいし選ばれたいとも思うわけですが、正直言って、できることなら重い覚悟はあまりしたくないし、決断はできるだけ先延ばしにしたいし、どっちとも末長く上手くやっていきたいと思うわけですよ。そういうゲスい人をハッピーエンドにする話があってもいいんじゃないかしら、と思うわけです。東京タラレバ娘とかね、そういう話なのかなって思ってたんですけどね、ちょろっと見たら、吉高由里子は最終回に向けて決断を迫られてる感じでしたね。あ、こちらも「突然ですが」と同じパターンなんだな、と。

 

一方、カルテットの最終回は、近年では珍しい力の抜け加減だったなと。最終回以外ほとんど見てないんですけどね。このドラマは、最近のドラマと比べて覚悟、決断、行動の描写がたんたんと描かれてましたね。いやまあ色々な場面でそれなりに覚悟も決断も行動もしているんですけどね、暑苦しいところをなるべく省こうとしているような印象を受けました。最終的に四人の絆の象徴であるコテージを出て行くことわけですけど、そのへんの描写はほとんど省かれているわけですよ。軽く、明るく、少し寂しい余韻が残る感じで終わるんですよね。それはそれで好感を持ちつつも、なんか物足りないなーって思っちゃうわけですけどね。