映画「バーディ」が描く、戦争と理想と現実

昨日の深夜、ふとテレビをつけたらNHKのBSプレミアでバーディっていう映画をやっていたのでなんとなく見ていたら、そんなつもりなんてまったくなかったのに、見入ってしまった。

 

戦争で心をやられて精神病棟に収容されているのがバーディで、親友のアルが彼の心を取り戻そうとする話。バーディは、今で言う発達障害がちょっと入ってる感じで、少年からずっと空と鳥に異常なまでの憧れを抱いていて、田舎の悪童って感じのアルとひょうなことから意気投合し、共に遊ぶようになる。ふたりはベトナム戦争に駆り出され散り散りになってしまう。戦争で顔の大部分の皮膚を移植するほどの大怪我を負ったアルは、おなじく戦争で心をヤられてしまい現実に戻ってこれなくなったアルの存在を知り、彼を現実に呼び戻すため病院に召喚される。

異性との関わりにも興味が持てず、ただただ鳥と空に執心してきたバーディは、誰にも理解されず、父とアル以外には誰にも心を開けなかった。職人の父は、時代の変化に耐えられず、報われない日々を送っている。唯一の友人のアルとも、その執心が原因で喧嘩別れし、そのまま徴兵されていった。さらにおぞましく痛ましい戦争の現実が彼を襲い、とうとう彼は一切の現実から心を閉ざしてしまった。

鳥と空は平和と自由の象徴で、それを愛するバーディは、誰もが抱く、あるべき人間の象徴だった。バーディを馬鹿にして嘲笑う人たち、戦争、望まないことばかりが起こる残酷な現実は彼を必要としていなかった。そして彼も現実を必要としなくなった。

金を儲けるために、良い女を捕まえるために、精力的に行動するアルもまた、私たちの現実的な一面を象徴する人物だった。暴力的で狡い親やケチな商人や高慢な上司たちと、不本意ながらもなんとか折り合いをつけてやってきたアルもまた、戦争が象徴する現実の残酷さに心が折れかけていた。

 

とくにドラマティックな展開はないのだが、病棟と回想を行き来するうちにいつの間にか一言も喋らないバーディに感情移入していた。平和と自由を象徴するバーディの神秘的な姿は、誰の心の中にもあるのだと思う。

アルはバーディを取り戻し、二人で病院を逃げ出す。追い詰められたバーディの行動にアルが目を丸くするところで映画は終わる。久しぶりに時間が経つのが気にならないほど没頭したのだが、白状すると、最後の最後で時計を確認してしまい最後にバーディが何をしたのか見逃してしまった。しかし多分想像は間違っていないと思う。彼は自由になったのだ。

アルは顔の皮膚を移植したが、最後まで顔の包帯を取ることはなかった。どんな姿になったのかは誰にもわからないままだ。あとナースのハンナがすきっ歯だけどかわいい。全体的にたんたんと進む象徴的で芸術的な映像だったが、監督が「小さな恋のメロディ」の人だと知って納得。余韻が似ている。

 

バーディ [DVD]

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