重作業に対する認識が甘い日本は福祉に厚いとは言えないのではないだろうか

障害者支援の仕事をしていた。主な仕事は介助である。介護ではない。

介助とはざっくり言うと、ジョジョのスタンドのようなものだ。

 

完全に手助けをすると、その箇所の筋肉が弱ったり、慣れてしまって甘えが出たりするから、後ろについて最低限の手助けをする。だが、トイレ(と風呂)は別だ。ただでさえ精神的にキツイ下の処理なのに、車椅子だったり足が不自由な人だったりすると、肩を貸したりその身体を持ち上げたりしなければならない。人によっては、負荷が分散するように身体の向きを調節したり、ふんばったりができなかったりするので、そういう場合はこちらが全負荷を支えることになる。短い時間とはいえ、思った以上の重労働だった。そしてこの業務は、絶対に避けられない基本的かつ超重要な仕事だ。腰が悪い人にはまず務まらない。これができなくて辞めていった人もいた。

ある日、この仕事で腰を悪くしてトイレ介助ができなくなってしまった先輩が、私にこんなことを聞いてきた。

 

スウェーデンでは何kgから重作業って言うか知ってますか?」

 

日本の基準すら知らない私は「しらね」と即答したかったが、そういうわけにもいかないので、これまでの仕事経験を雑に振り返ってみた。引っ越しが重作業なのは当たり前として、軽作業と謳われた洋服通販のピッキング作業は、最低10kg最高30kgはあるダンボールを一日中運んでは開けていた。30kgをゆうに超える、分厚い液晶テレビぐらいの大きさの基地局をひもで背負って、電柱のてっぺんやビルの最上階まで階段で昇ったりもした。プラスチック製品を作る工場では、20kgのプラッチックの粒が入った米袋のような紙袋を、一日数十袋持ち運びしていた。

 

20kgくらいかと答えた私に、驚愕の答えが返ってきた。

厳密に何kgだったかは失念したが、「ペットボトルを持っても重作業なんですか?」というやりとりは記憶に残っているので、おそらくは1kgくらいだと思う。それ以上の重さの物を運ぶ仕事は「重労働」となり、作業従事者は機械や補助器具を使ったり、複数人で作業をするようになっているらしい。ソースを調べてみたがわからなかったので断言はできない。間違っていたら訂正してほしい。ちなみに日本の重作業の基準を調べてみたら、おおむね20から30kgくらい(場合によってはそれ以上)だった。わたしの認識とえらくかけ離れた数値にとても驚いた。なぜスウェーデンなのかというと、福祉に厚く、世界一と言われるほど介護が充実している国だからだ。つまり、日本とスウェーデンとでは、介護ないしは介助者(だけでなく全労働者)の肉体的負担には、とてつもない差があるのだ。

そりゃあ腰を壊す人がたくさんいるわけだ、と目からウロコが落ちた。知らない国の知らない事情をなんとなく知っただけで、いままで当たり前だと思ってやっていた軽作業(として募集されている仕事)が、中世で歯車を回す奴隷のごとき扱いに感じられた。休みは少なく、制限は多く、給与は少ない。ていうか奴隷の方がマシなんじゃないか。

 

とまあ、そんなことがあったわけだが、この話がただの腹立たしい話で終わらなかったのは、トイレ介助をする女性の介護士を毎日見ていたからだ。障害者施設の場合、基本的に要介助者は成人しているからプライバシー的にもNO。逆に襲われてしまう(知られていないだけで意外とある)可能性があるので性的にもNO。女性トイレに男性が入るのはもちろん法的にNO。どんなに太っていようが、どんな理由があろうが、介護の女性は自分の力で要介助の成人女性の下の面倒を見なければならないのだ。不思議というか恐れ入いったのは、介護福祉士の女性が腰を壊した話や弱音を一度も聞かなかったことだ。同性の同僚や上長には訴えているのかもしれないが、なんにせよ毎日重作業をたんたんとこなしていた。いいかげん、重作業に関する認識を改めて、なんらかの法的な助けがなされればいいのになあ。

 

最近保育所での女の子のトイレを男性保育士が処理するってどうなの問題が話題になっているが、そりゃあかわいい我が子の下の世話をどこの馬の骨とも知れぬ男性がやるなど言語道断!という気持ちもわからんではないが、しょせんは子供じゃないか、と思ってしまうのは、以上のような経験をしたからであり、私に子供がいないからでもある。そんなことよりも、子供の保護者が保育士を全く信用していないことがとても哀しいし、そもそも子供の下の世話なんて、肉体的にも精神的にも所要時間的にもそこまで大変じゃないのだから、普通に同性の保育士が面倒を見ればいいじゃないかと思う。加えて言うと、そこまで女性の手が足りなくなることに問題があるんじゃないのかなあ。などと昔のことを思いだしながらつらつら考えつつ、話題になっていたソースをのぞいてみると、トイレ問題ではなく着替え問題だった!そんなんどーでもえーわ。