レンタル倉庫という名の沈没船

「本棚を見ればその人のことがわかる」とか「部屋はその人の頭の中をあらわしている」とか、そういうものの見方がある。確かに他人の本棚の中身から読み取れる嗜好や思考などはあるし、部屋が散らかっているときは決まって調子が良くない。そういった考え方は面白いし、おおむね見当違いでもないのだろう。では、レンタル倉庫の中身からは、その人の何がわかるだろうか。

どんな町にも、リサイクルショップがある。私はこの手の店に目がない。それがどんなにしょぼくれた店でも、とりあえず入ってくまなく店内を見て回る。掘り出し物を見つけることも少なくないし、ずっと探していたものがひょいと投げ売りされていることもある。とにかく、物心ついた頃から中古品が大好きで、リサイクルショップで物色しているときの、沈没船をサルベージしているような気分が好きなのだ。しかし、ずっとわからないことがあった。あれだけのジャンク品をどこからどうやって仕入れているのか、要するに来歴だ。あまりにもとりとめのないことなので、あまり考えることはなかったのだけど、数年前、度重なる不本意な出来事と、ひょんなことからリサイクルショップを始めた先輩の厚意によって、計らずもその答えの中の一つを経験することができた。それがレンタル倉庫の買取だ。利用料の支払いが滞り、契約により処分される倉庫をまるごと買い取るのだ。その中に何が入っていようとごっそり買い取った人のものになるのである。そしてそれらのワケあり品が、うらぶれた商店街の端っこにあるしみったれたリサイクルショップに、ところ狭しと並ぶことになるのだ。

 レンタル倉庫と一口に言っても、道沿いの空き地に積み上げられたコンテナや、コーポを改装したような部屋タイプのものなど様々ある。わたしが関わったのは、都会の駅近の一等地にある、大きなビルが一棟まるごとレンタル倉庫になっているものだった。一階が受付になっており、そこでカードキーをもらい、キーを通してエレベーターに乗って目当ての階まで行く。階を降りると、フロアは真っ白のパーテションで四畳半から六畳くらいの部屋に細かく区切られている。その空間が倉庫として貸し出されているのだ。処分される倉庫の買取金額は定額で、といってもわたしはその金額を知らないのだが、中身ではなく、倉庫の広さに左右される。大型液晶テレビやほとんど乗られていないロードバイクなどの大当たりの品物が入っていることもあれば、大きなビニール袋いっぱいに入った注射器や拳銃が見つかることもあった。奥から天井までびっしり、ゴミ同然の小物で埋め尽くされている倉庫もあった。中でもびっくりしたのは、ダンボールの上にビデオデッキとテレビが置かれ、その前に布団が敷いてあり、枕元には灰皿が置かれてあった倉庫だ。間違いなく、そこに寝泊まりしている人がいたのである。確かに駅からすぐだし、空調も24時間効いているし、電気も通っているから、住み心地は悪くないだろう。そのレンタル倉庫は初月1円のキャンペーンをやっていたから、家賃も1円である。つまり、はなっから一ヶ月だけしかいられないことを知っていて、それでもそこを寝ぐらにせざるをえない人がいたということだ。そして一ヶ月が経ち、利用者はどこかへ行ってしまい、私たちが後始末をしているのだ。この例に限らず、レンタル倉庫をバックれてしまった人というのは、皆ワケありな人たちだったに違いなく、そういった人たちの持ち物が回り回って店頭に並んでいることを知った私は、どうしてリサイクルショップが好きなのかがわかったような気がしたし、リサイクルショップに漂う、どうしようもなく物悲しい空気の正体に触れることができたような気がした。倉庫の中でゴミとそうでなさそうなものを二人でせっせと仕分けする。セカンドバックの中に入っていた、流しの演歌歌手とおぼしき写真に目を奪われた。「ここ使ってた人ってどうなったんでしょうね」と私が聞くと、新品の家電を品定めする大きな背中は「そういうことを考えると頭がおかしくなるぞ」と言った。