ワ〜ルドメイト

みすず学苑の広告は、普通の人がまともでないことをやるのではなく、普通でない人がまともなことをやってるっぽくて好ましい - 意味をあたえる

 

私が東京に住んでいた時、最後に暮らしたマンションの二階のテナントにみすず学苑が入っていた。一階は美容室、三階からが住居で、一階は三部屋に分けられている。わたしは角部屋で中年女性が真ん中、もう一方の角部屋には小さな事務所が入っていた。みすず学苑のことは電車の広告で見て知っていたくらいだったが、気味の悪い塾だと思っていた。ある時、友達から電話があって、おまえのマンションやべーぞと言う。話を聞いてみると、みすず学苑はワールドメイトという宗教団体と深い関わりがあるから、ということで、つまりこのマンションはワールドメイトの息がかかっている可能性が高いということだった。ワールドメイトは、みすず学苑とはなんの関わりもありません、という公式声明を出しているが、ワールドメイトのホームページを見れば、みすず学苑の広告がどうしてあのような作りなのかが一目瞭然なのである。関わりがないとは考えにくい。昔、訪問工事の仕事をしていた時に薄暗いワンルームに住む男のテレビラックの中にワールドメイト代表、深見東州のDVD(一発ギャグ100!みたいな名前)を見つけてしまったことがあるが、持ち主はギャグどころか話すらままならない暗い男だった。たしかに引っ越し早々「このマンションにはシャブ中がいます」という新聞雑誌を切り張りした怪文書が届いたし、塾生はいるのかいないのかわからないし、隣に引っ越してきた中国人の女がド深夜に窓を開けたまま向こうの言葉の日本語学習テープを大音量で流すもんだから壁を思い切り蹴ったら逆に怒鳴り込んできて玄関を隔てて開けろ開けないの大ゲンカの末にすぐに部屋を引き払ったり、黙って飼っていた猫が隣の部屋のベランダに行ったまま帰ってこなくなったり、五階建てのマンションなのに二年住んで一回も住人に合わなかったり、思い当たる節はありすぎるほどだったが、私もどちらかと言えばそちら側の属性の人間だし、むしろ住み心地は良かった。で、わたしが引っ越しを決める頃には、みすず学苑は無くなっていた。荷物をあらかたまとめ終わった頃、シャブ中が隣に住む中年の女性であることが分かった。売人と思われる中年男性が、隣の玄関前でブチ切れていたからだった。どうやら女性はシャブをツケで買っていたようで、なんの理由か、その金が払えなくなったのだろう、部屋に閉じこもってしまったのだ。私は玄関前で耳を澄ましていたが、大声で怒鳴っているから全て聞こえてきた。どんなオヤジなのか、のぞき穴に目を押しつけてなんとか見ようとしたが、キャスケットしか見えなかった。隣部屋の女性の顔は一度も見たことがないが、泣き喚く声が中年のそれだった。めんどくさいのは嫌いなので、警察に通報はしなかった。結局猫は帰ってこなかったし、わたしのポストに怪文書を入れた人が誰だったのかもわからないままだ。

広告を非表示にする