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「トラックは事務所に後ろから突っ込む」ことに気がつけなかった

ここ数日、暴力団事務所に車が突っ込む事案が頻発している。抗争は本格化しているようだ。新聞でもテレビでもラジオでもどこでも一日一回は聞いているような気がするほどだが、あるラジオのニュースを聞いていて、
「トラックが後ろ向きに暴力団事務所に……」
ハッとした。
わたしは、車が建物に突っ込んだニュースに接した時、いつも前から突っ込む絵を想像していた。しかしそうではなかった。後ろからトラックを突っ込んでいたのだ。考えてみれば至極当たり前のことなのだが、思えば、ドラマや映画やアニメなどで車が突っ込む時、それらはすべて前から突っ込んでいたような気がする。もちろん、そちらの方が絵になるからだ。そういうのを見ているうちに、そのような固定観念が出来上がってしまったのだろう。不覚。

しかも、トラックの運転者は、近場に停めてある軽自動車に乗って逃げたというではないか。用意周到この上ない。わたしの想像では、実行犯は少なくとも二人はいる。トラックで突っ込む役と、軽自動車に乗って待機する役。どちらも、血の気の多い若い衆なのだろうが、こういった場合に運転者が捕まったという話は寡聞にして知らない。まあ、あったとしてもそれがニュースになることはないだろうが。トラックを突っ込んで、速攻で車から降りて軽に飛び乗る。かっ飛ぶ軽の中で「アニキ!やったりました!」なんて息を切らして電話しながら運転手の兄弟からジョイントが回ってきて、深く一服してハイタッチでもしていたのかと想像すると、ちょっと楽しい。

しかし、後ろから突っ込むということは、一般道においてはなかなか簡単ではない。車道をバックでブロロローっと走ってきて、そのままドン!というわけにはいかない。一度事務所を通り過ぎた後で一旦停止して、バックする。というのも、後ろに車がいたらできない。あらかじめ後ろから突っ込むにしても、やはり一時停止して機会をうかがう必要がある。逃げやすい体勢を作るためには、運転席の前に空間を確保しておきたいところだから、事務所が車道の側面にある場合、一度通り越えてから、左にハンドルを切りながらぶつかっていくのがいい。左のケツを建物にぶつける感じにすると、右前方に空間が開ける。ならば、逃走用の軽自動車は、事務所より手前に停めておいたほうがよいだろう。もちろん、アイドリング状態で待機だ。日本は車道が狭く、住宅感覚も狭苦しいので、チャンスもなかなかなかったかもしれない。連絡を取り合いながらタバコを何本もふかしていたのだろうか。事務所側も、この手の輩がくるだろうことは、さすがに想定の範囲内だったろうが、入り口近辺に若い衆を立たせてはいなかったのだろうか。監視カメラもあったはずだ。防ごうと思えば、どうとでも対処できそうな気もするが、緊張が持たないのかもしれない。なんだかゲリラ戦のようだ。事務所にトラック突っ込み事案が発生しすぎているのは、そういうことなんだろうか。

また、犯行に使用されたトラックは、すべからく盗難車なのだが、トラックを盗難するなんてことは、普通ではありえない。もう突っ込むために盗んだとしか考えられない。例えば大手運送会社などのトラックは、盗まれたらすぐに届け出るだろう。そもそも盗むこと自体が難しそうだ。デコトラなんてものも、刺青みたいなもんで、あああのデコはどこそこの誰それのものだとすぐに足がつきそうだ。つまり、中小企業の無個性なトラックが盗まれたのだろうが、土建屋などが暴力団とつながっているケースはけっこう多そうなので、盗まれたトラックの所在を追っていけば色々わかるかもしれないと思ったが、その程度のつながりなど、界隈の人間にとっては、調べるまでもないことだろう。

一番トラック転生しているのはヤクザもんだろうから、転生先の世界が荒れているのも仕方がないことなのかもしれない。読んだことないけど。