着メロはなんですか

ひと昔前の着メロは、まだ電子音が主流だった。当時の着メロは、アキラの金田のテーマだった。当時の着メロの完成度はかなり低かった。大好きな曲だから着信音にしたいのに、その着メロの完成度のあまりの低さに着信音に設定したくない、というジレンマがあった。曲自体がないものも多かった。そんな中、メールの着メロをEarth,Wind&FireのLet's Grooveに変えた。わたしの持っていた携帯には録音機能があって、何かの拍子に録音した音源を着信音に設定できる機能があることを知った。だからわたしは好きな曲をパソコンで流して、音はコンポにつないでいたから、スピーカーの前で息を潜めて携帯を押し当てて録音し、それを着信音にしたのである。この作業はなかなか手間取った。まずどこから始まりにするかというところを決めるわけだが、それはもちろんサビのところになる。曲の開始から録っていては、前奏始まらないうちにメールは受信完了してしまうからね。曲の途中から録音を開始するわけだが、録音の終わりも決めておかなければならない。着信音は、エンドレスリピートが基本だから、つなぎ目に違和感があると、すべてが台無しになってしまう。違和感のない最高のタイミングで録音終了しなければならない。そんなわけで、パソコンの音楽プレーヤーで始まりと終わりのの秒数を決める。そしてプレーヤーのstart buttonと携帯の録音開始ボタンを、同時に押してスタートする。一方はマウス、一方は携帯。そのときのわたしのポジショニングはとても不安定で、マウスのほうも携帯のほうも同時に見ることができない。マウスはちょっとの動作も敏感に捉えるので、腕の震えでstart buttonからポインタが外れてしまう。携帯のほうも、録音口は通話のぶぶんなので、画面を外側に向けて、ボタンを押せるようにしたままスピーカーに当てているので、録音開始が確認できない。また、ボタンを押してから録音開始まで、コンマ秒の遅れが生じる。リピート時も同様に遅れが生じるので、ボタンを押すタイミングをコンマ単位で調節するのだが、こればっかりは聞いてみないとわからないので、録っては消して、録っては消してを繰り返す。2〜3時間は格闘した。そうして完成した着メロはもちろん大満足で、大のお気に入りだった。調子に乗って、いろいろ他の音楽も録音して着メロにした。電話のほうの着メロは、パルプフィクションのComancheだった。そのあとで、WarのLowriderに変えた。金管楽器のリフだけを抜き出したLowriderは、一番のお気に入りになった。始まりもつなぎもスムーズの最高傑作だった。電話がかかってくるのが、メールが届くのが、とても楽しみだった。




そんな矢先、当時の仕事場が着メロを禁止しやがった。ちょうどその頃、着うたなんてもんが出始めて、そこらへんのヤンキー崩れの作業員どもがこぞってアホが聞くようなクソださいJPOPやJROCKをギャンギャン爆音で鳴らすもんだから、うるせー!っつって客先から大量のクレームが届いたからだった。いつだってバカのせいで俺のところにまでしわ寄せがくるんだ。

着メロひとつであんなに苦労したことも、いまではいい思い出。今の着メロは、metersのThe World Is A Little Bit Under The Weather なんだけど、これは始まりから使えるのでただ携帯にぶち込んで設定しただけなんだけど。着メロって何気にこだわりがあったりするよね。そうでもないかな。


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