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眠っているのに起きていた

鼻がこそばゆくなり、眠っていたことに気がついた。

意識ははっきりとあるのだが、布団に沈む自分の体は動かない。それは、意識と身体を連動させるスイッチがオフになっているような、まどろみとも朦朧とも異なる感覚だった。ただ、鼻がこそばゆかった。

このままもう一度眠りにつくことも、目を開けて体を起こすことも、どちらもできそうだが、どちらもしたくなかった。手のひらに棒を立てているような、ギリギリのバランスを保っていたかった。自由がありそうでない夢と、自由がなさそうである現実の間でぷかぷか浮いているような不思議で心地よい曖昧な感覚だった。

浮かんでは消える泡のような思考もなく、ぬくもりの以外の感覚もなかった。意識をつないでいるのは、鼻のこそばゆさだけであった。意識が鼻に、集まっては散っていく。その繰り返しの中で、次第に鼻に感覚が集まっていく。頭ごと布団の中にいるのに、鼻に何かが停まっているような、鼻に何かがついているような。

やがてそれは確かな感覚となり、こそばゆさから気持ち悪さに変わっていく。ついに我慢できなくなって、手のひらで鼻先をこすった。髪の毛だった。わたしは目を覚ました。


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