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車から

線路と垂直に交わる道の両端にはサッカーができるくらいの広さの田んぼが広がっている。車に乗ってその道の先にあるコンビニに向かっていたら、一人田んぼに入っていく老人がいた。なんだろうと思い徐行で様子をうかがっていると、あたりをきょろきょろするや否やいそいそとズボンを下げて小便をやりだした。道路沿いの、遮蔽物も何もないだだっぴろい収穫後の田んぼで。いやいや私が見てますよ!と思ったが、田んぼで立ち小便をする老人を眺めているのもアホらしいので、前を向きアクセルを踏んだ。

考えてみると、歩いている側から車に乗っている人のことはあまり意識しない。車に乗っていても、歩いている人が何をやっているかなど、あまり気に留めない。どちらも目にした瞬間の記憶が残ることはある。車に乗っていて一番よく見る顔は、ミラー越しに見る後ろの車の運転手の顔だ。車の運転手は、いい顔をしていないことがほとんどだ。その真顔は、イライラしているからなのか何かしら注意しているのからなのか。すぐに忘れる顔だが、気分がいいものではない。おそらく私もそんな顔になっているのだろう。

立ち小便をする老人の心の奥には、どうせすぐ走り去るんだから、という思いがあったのかもしれない。おもむろに車から飛び出して声をかけたらどんな反応をしただろう。
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