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カートコバーンの承認欲求

カートコバーンは27歳の時、ショットガンで頭を撃ち抜いて死んだ。死の真相について様々な憶測が飛び交った。27歳で死んだ数々の天才アーティストとなぞらえて「27歳のジンクス」 などというものがあることを当時の雑誌記事で読んだ。当時の私は、27歳で自決する自分を妄想して悦に入った。破れたジーンズを履き、くたくたのカーディガンを探して古着屋を巡った。

カートコバーンの話で印象に残っているのは、彼は小さなホールでの活動を好み大ホールでライブをやるのを嫌がっていたことだ。アンダーグラウンドな存在であることにアイデンティティを見出していたのだろう。それは幼少期のトラウマが芽生えさせた劣等感に端を発するものなのかもしれない。

創作に対する個性と没個性のパラドックス。自己表現のための自由な活動が、周りに認められるに従って窮屈なものになっていく。二律背反の真っ只中での葛藤。これは持たざるものから見れば大変に羨ましい境遇に見えた。しかし彼は、そんな環境に絶望し、壮絶に果てた。

その後、カートコバーンは本になった。ファンはこぞって本を買い求めた。異国の地にまで自分の人生が広まっていることを知ったら、カートコバーンはどんな思いを抱くだろうか。やがて陳腐化したカートコバーンは、二束三文で買い取られるようになった。今もどこかの誰かの家の本棚で、埃をかぶっている。

カートは自身が自決をしてまでなりたくなかったものになってしまったのだろうか。そうではないのだろうか。古本屋に並ぶ色あせたカートコバーンは、こちらを向かされたまま何も言わない。

カートコバーン/Heaven

カートコバーン/Heaven



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