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ライブの時にアレをやれるような人間になりたい

私は、ライブの時にアレをやる人たちを、恥ずかしくも羨ましい気持ちで見ている。アレに名前はあるんだろうか?

私は一回だけライブをやったことがあるが、アレを強要された。

ちょっと長めのギターソロで、ギターボーカルが満面の笑みでこちらに歩み寄ってくる。
「こっちくんな!」
と思いながら私は後ずさるんだが、元々これ以上後ずされない位置でギターを弾いていた。逃げられない。
「アレやるぞ!」
と言っている。目を見ればわかる。目がトロンとしてる。

そいつは、気持ちよさそうにギターを弾きながらこちらに背中を向けて誘うようにダバダバしてる。
「背中をくっつけてこいよ」
観念した私は、力なく歩み寄りフレンチキッスのように背中をちょんとつけた。近くで見るそいつの顔のイキイキしてることといったら。
この時、ああ私にバンドはできないんだ、と悟った。

私がアレをできなかったのは、ギターが下手くそだった引け目からだろうと思っていた。しかしそれよりももっと根本的なところに原因があるんじゃないだろうか。音楽を、バンドを楽しむことができれば背中を合わせることができたのだろうか。そいつと仲が悪かったわけではないが、もっと仲がよければ背中を合わせることができたのだろうか。私のアレに対する拒否反応は一体なんなのか?

アレは相当の自信がなければできない。その自信は多分、自分に対するものだ。アレをやる奴はナルシストなんだ。アレをやるには資格がいる。だからライブでアレをやっているのを見ると、恥ずかしくも羨ましい。

といっても、よく考えてみたらそれ以来アレを見ていない。本能がアレを察知して無意識に回避しているのかもしれない。アレをやれる人間になりたい。