電車を待つ間

私は、無人駅のホームで一人電車を待っていた。時計も時刻表も見ないでただ待つことにしたのだが、いったい何十分待っているのだろうか。線路の向こうの空き地には、軽自動車がまばらに止められている。駐車場というにはいささか拙い。ずっとむこうの道路を走る車が空気を割く音をなんとなく聞き、赤く色づきだした丸い山々を、なんとなく見る。誰もいないホームのベンチに腰掛けて見るそれは、非現実的な空間のようだった。時間が止まっているようにすら感じた。今誰かがホームに来たら、私の領域に意図せず踏み込んだかのような息苦しさを覚えることだろう。もちろん私も息苦しい。
……と思ったが、普通は時刻表を見て時間を合わせてくるので、誰かが来るということはもうすぐ電車が来るということだ。それは望むところだ。
ディーゼルのエンジン音が近づいてきて、向かいの空き地にのそりと顔を出した。バスは窮屈そうに空き地を旋回し、ほんの少しだけ停車すると、のそりと去っていった。停留所には誰もおらず、誰も降りることはなかった。もうすぐ電車が来る。待ちわびていたはずなのだが、電車に乗ると時間が急に動き出すような気して、名残惜しくもあった。
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