カラスは盗み、狐は騙し、イタチは出し抜き、そして人は騙る。騙るは人の定め。詩人は詠う。「人は嘆くために生まれしもの」と。だがそうではない。人は騙るために生まれたのだ。それこそが、まさに人の目的である。それゆえに、騙ることを「仕事を果たす」と表現するのだ。
あなたは嘘をついたことがありますか?ないとはいわせません。
あなたはこれからの人生で嘘をつかないと誓えますか?誓わせません。
仕事で、家庭で、友人に、恋人に、子供に。私たちは、生きていくうえでどうしても嘘をつかねばならない時があります。また、その必要がなくてもつい嘘をついてしまうことがあります。.
しかし仕方がないのです。私たちは騙るために生まれてきたのだから。
ですから「嘘をついた」ということそのものを咎めるのは無理筋なのです。
その刃は、自分も傷つけることになります。
ひどくなると、自分の間違いを認めることができなくなってしまいます。
身に覚えのない、という人がいるでしょうか?
嘘を咎めるのではなく、嘘を嫌うのでもなく、その理由や目的に考えを巡らせることが騙されないために、またうまく騙されるために大切だと考えます。その背景を知ることができたとき、「そういうことなら」と合点がいくかもしれません。「ますますもってけしからん」と、なるかもしれません。
もちろんその考えが間違っている場合があることは肝に銘じておかねばなりません。
判断する上で必要なのは、確からしい情報(事実)の量です。
冒頭のエドガー・アラン・ポーの言葉は「詐欺師入門」という本の巻末に寄せられた文章に出てきます。
この本の誕生の仕方はかなり珍しいものだ。言語学の研究を行うにあたり、多くの詐欺の背景について調べていく中で生まれた全くの副産物だからである。資料に目を通していた信用詐欺師から、冗談半分で勧められたのがきっかけだった。有能な専門家の協力があったからこそできた本なのだ。
という書き出しから始まる本書は1800年代後半の詐欺師と詐欺について書かれたものですが、現在の詐欺を考えるための入門書としても通用する内容となっています。このころの技術が洗練されて現在に至っていると考えられます。
まずはこの本の内容について理解を深めていきながら、現在の詐欺について、また騙るということについて考えていきましょう。
- 作者: デヴィッド・W.モラー,David W. Maurer,山本光伸
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1999/09
- メディア: 単行本
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